赫 悠太郎(てらし ゆうたろう)さん、中野 夏希(なかの なつき)さん

奈良県→和歌山市

―赫 悠太郎(てらし ゆうたろう)さんとパートナーの夏希さんは、趣味のサーフィンを「本格的に取り組みたい!」との想いから、当時住んでいた奈良県から2023年4月に和歌山市に移住。現在は、和歌山での趣味ライフを満喫しているというお二人に、移住するまでの取り組みや、現在の生活についてのお話を伺った―

関西屈指のサーフポイント「和歌山市・磯ノ浦」

古くから多くのサーファーに「イソコ」の愛称で親しまれる「磯ノ浦(いそのうら)」は、大阪市内から車や電車で約1時間、大阪府との県境にある和歌山市の北西部に位置し、「大阪から一番近い」とされる関西屈指のサーフスポットである。
赫さんは「夏の磯ノ浦はものすごく混雑するので、夕方に行くことが多いですね」と話す。夏希さんも「日焼け対策を万全に」して磯ノ浦を訪れる。3年程前に友人の誘いでサーフィンを始めた赫さんと夏希さん。当時、奈良県に住んでいた二人は、休日には車で片道90分をかけて、磯ノ浦まで通った。
仕事に追われ、決まった時間に決められた仕事を繰り返す日常の中で、1つとして同じ形のない波を相手にするサーフィンに魅せられたそう。そして、「本格的にサーフィンをやりたい!」と思った二人は2022年の秋に和歌山への移住を決意する。

磯の浦海水浴場

仕事の傍ら移住に向けて準備を進める

和歌山への移住を決めた赫さんは、まずインターネットで情報収集を開始。しかしながら、たくさんの情報があり、自分で検索するだけでは、住まいや仕事に関する情報を効率的に集められないと感じた。そこで、総合的に相談できる場所を探したところ、「わかやま移住定住支援センター」の相談窓口が大阪市内にあることを知る。早速、大阪窓口を訪ねると、自身も和歌山県への移住経験を持つ担当者が相談に応じてくれた。
「希望する地域の条件を伝えたところ、候補地を複数挙げてくれました。そして、それぞれの『魅力』に加えて、生活者視点での『不便な点』も丁寧に教えてくれました」と赫さんは振り返る。
移住後の仕事については、当時、保育士として働いており、その経験を活かせる仕事を希望していたため、福祉職専門の無料職業紹介所である和歌山県福祉人材センター「ハートワーク」に繋いでもらった。
赫さんが紹介されたのは、保育士のキャリア支援を得意とするコーディネーターだった。2022年12月、和歌山市にある「ハートワーク」の事務所でコーディネーターと面談し、希望する勤務地、仕事内容などを伝えたところ、いくつかの就職先を提案してくれた。後日、コーディネーターがセッティングしてくれた職場見学にも参加。「パソコンの画面上では知ることのできない、職場の雰囲気なども感じることができました」と話す赫さん。
当時、平日は仕事のため、隙間時間や休日を利用しての求職活動だった。「頻繁に和歌山に来ることは難しく、コーディネーターの方にはかなり無理をお願いして、職場見学の日程調整などをしていただきました」と赫さんは話す。そして、仕事探しを始めてから3か月後、二人はともに和歌山市内で希望に合う仕事を見つけることができた。「仕事をしながらの求職活動でしたので、かなり大変でした」と、夏希さんも話す。
限られた時間の中での移住準備について、「土地勘が全くない中での仕事・住まい探しは、とても不安でした。また、仕事をしながらだったので、やるべきことに忙殺され、何度も心が折れそうになりました。それでも最後まで頑張れたのは、『新しい暮らしをしたい』『和歌山に行ったら楽しい』と思い続けることができたからです」と振り返る。

和歌山市は「トカイナカ(都会×田舎)」

二人が移住を決めた和歌山市は、大阪市内から車で約1時間、関西国際空港からは約40分という場所にある。紀州徳川家の居城・和歌山城をシンボルとする中心部、大学やショッピングモールのある北部に加え、東部では田園風景、西部・南部には海辺の景色が広がり、都会の利便性と田舎の自然豊かな環境を兼ね備えた「トカイナカ」である。

「トカイナカ」和歌山市の魅力

休みの日の過ごし方について伺うと、「同僚に和歌山のおススメのごはん屋さんを聞いて、食べに出かけます。先日訪ねた定食屋さんでは、750円のお造り定食を堪能しました」と赫さんは楽しそうに話してくれた。また、「和歌山県内の観光スポットにも出かけます。ススキ野原で有名な生石高原。二川ダムに架かる蔵王橋にも行きました。橋は想像以上の高さがあり、ぶるぶる震えながら渡りました」と夏希さんも週末のお出かけを満喫しているよう。
さらに「服などの買い物をする場合は、大阪市内の難波、梅田まで出かけますが、JR和歌山駅からは1時間程度で行けます。サーフィンもできて、大阪都心部までのアクセスも良く、美味しい料理店や景観の良い観光地もたくさんあって、空気も美味しい。私達にとって、和歌山市は何でも楽しめる場所、何でもできる場所です」と二人は付け加えてくれた。

和歌山県内の観光スポットも満喫(生石高原)

移住を検討されている方へ

移住を検討されている方に向けたアドバイスを赫さんにお願いしたところ、「大切なことは『どんどん人を頼る』ことだと思います。私達の場合は、わかやま移住定住支援センターの大阪窓口に相談し、紹介してくれた『ハートワーク』のコーディネーターさんから和歌山市内の求人案件を多く紹介してもらいました」「インターネット上にも、地域情報や求人情報はたくさん掲載されていますが、本当に役立つ情報、タイムリーな情報を選別するには多大な労力が必要です。仕事をしながら、移住の準備を進める場合、情報収集を自分達だけでやろうとすると、なかなか前に進めないように思います。そんな時、経験も知識も豊富な方に相談することができれば、労力・時間を節約することができます。移住先での『新しい暮らし』『楽しい暮らし』の実現に向けて、遠慮せず、躊躇せずに『どんどん人を頼る』こと。これがポイントではないでしょうか」と話してくれた。

夏希さんと赫さん

―和歌山市への移住を決断してからの半年間、赫さんと夏希さんは仕事や住まい探しに奔走。仕事を抱えながらの移住準備は、大量の「やることリスト」と移住後の不安で気が詰まったそうだ。そんな時は、和歌山での新たな暮らし、楽しみに思いをはせて、何とか乗り越えてきた二人。大変な時期があったからこそ、今は思う存分、全力で和歌山市での暮らしを楽しもうとしている。取材後、「この後、夕方から磯ノ浦に行く予定です」と話してくれた二人の表情には、満面の笑みがあふれていた。―
取材日:2024年8月18日