大阪府から2002年に古座川町へ移住し、現在は古座川町内にある国立大学法人北海道大学の和歌山研究林の管理業務を行う千井さん。元々は林業とかかわりはありませんでしたが、憧れていた田舎で生活するために林業を一から学び、国が推進する「緑の雇用」事業の先駆者として活躍。
テレビで見た理想の家族像を求めて
大阪市内でサラリーマンをしている頃、テレビで見た、和歌山で林業の仕事をしているお父さんが夕方に家に帰ってくると、それを嬉しそうに迎える子供の笑顔がとても印象的に映ったそうです。
「僕自身も、親の実家が京都の山手の方で、小さい頃は夏休みになるとそこで親戚のお兄ちゃんと虫を取ったり、川で遊んだりして、とても楽しかった記憶が凄く残っていて。やっぱり小さい頃から憧れがあった田舎暮らしがしたいなと思ったんです」。
当時就いていた仕事で、責任世代として多忙を極める日々のなか、ふと新聞広告で見かけた「緑の雇用」事業のイベントに参加したことが移住を考え始めたきっかけだったそうです。
直感的に面白そうだと思った
「それまで林業に携わったことはありませんでしたが、その広告の『森で働きませんか?』的なフレーズに直感的にこれは面白そうだなぁって思ったんです。ただ、当時の彼女(現:妻)には深くは話さず、イベントで大阪ドームのグラウンドに降りられるっていう口実で誘い出して、一緒に参加しました(笑)」。
イベントには各県の森林組合が窓口を出しており、その中に和歌山県がありました。千井さんは大阪出身だったこともあり、お隣の和歌山県に親近感があったと話します。
彼女が本気で一緒に考えてくれた
「イベント内の就業相談に彼女を連れて参加したら、昼食時に彼女から「え?本気なの?」と言われ、田舎暮らしをしたい思いを伝えると、彼女が「じゃあ、私も本気で考えなあかんやん!」って言ってくれました。もうそこからは、どちらかというと彼女主導で話が進みました(笑)」
古座川町の森林組合の担当職員からの誘いにより、2002年に古座川町へ移住。
数年間従事後、現在は古座川町内にある国立大学法人北海道大学の研究林の管理を行いながら、「緑の雇用」の先輩として、緑の雇用事業の研修生への指導や講義などもしています。
“家族の理解”と“明確な思い”
林業という今まで携わっていなかったことに挑戦しながら移住した千井さん。移住を考えている人たちへのアドバイスは?
「移住をする上で本当に大事だと思うのは“家族の理解”だと思います。自分一人の思いで先走って決める前に、しっかりと家族に理解してもらって、味方になってもらう事。これが何よりも先にやるべき事だと思います。それと“この地域でどう生きていきたいかを明確に考える事”が大事。これが曖昧だと、簡単に心が折れて挫折してしまう。僕も正直、何度か苦しいこともありましたが、この2つがしっかりとあったので、ぶれずに今までやってこられたのだと思っています。今はこの地域への恩返しだと思って日々活動しています」。