米倉敏郎さん、綾さん夫妻は2014年2月に大阪市から綾さんの地元、那智勝浦町へ移住してきました。子育てをしながら、夢だった雑貨店「compi(コンピ)」を営み、お客さんとの会話を楽しみながら交友関係を広げています。
きっかけは住宅兼店舗との出合い
移住前、敏郎さんはアパレルメーカーで製造や卸し、綾さんは雑貨店で販売の仕事をしていました。その頃から那智勝浦町を何度も訪れており、敏郎さんは「田舎独特の時間の流れや人と人との接し方がすてきで、憧れました」と当時を振り返ります。いつか家族で那智勝浦町へ移住したいという思いを持ちながら仕事を続けていたところ、綾さんの親族を通じて空き家の紹介を受けました。
那智勝浦町下里のその空き家は、特に綾さんの夢だった雑貨店兼住居にするにはちょうどいい好物件。さらに入り口にテラスが付いており、店舗にすると面白そうだと気に入りました。当時、周囲には住宅や田畑など以外にはほとんど何もなく、仕事や暮らしに不安はありましたが、「人のつながりは場所を問わない」「人は良い店を探して来てくれる」というこれまでの経験に支えられ、移住を決めました。
店づくりのこだわり
およそ半年かけて知人の大工さんと一緒に改装した1階部分を、雑貨店「compi」として2014年9月にオープン。初めは手探り状態だったお店の運営も軌道に乗ってくるにつれ、ギフトを探しに来店する人が多いということに気付いたお二人。現在はオリジナルのギフトボックス作りに力を入れており、試行錯誤を重ねて、県内で一番心のこもったラッピングをする店にしたいと意気込んでいます。
店内では自家焙煎のコーヒーを飲むこともできます。そこで、商品についてインターネットでの購入では伝えきれない情報を、会話を通して紹介し、お客さんにもそれを楽しんでもらえる店にしたいと声を弾ませます。敏郎さんは「お店をしているといろんな人や情報に出合えます。もちろん買い物目的以外でも集まってきてくれればうれしいです。会話で物事が動いていくのが都会とは違うところ。人と人とのつながりが自然で居心地がいいです」と話します。
「人の関わりが一番大事と実感」
現在ではコンビニや保育所、新宮市へ続くバイパス道路の入り口ができて交通量や人の出入りが多い下里地区。町内は店が少ない分、自治体から意見を聞かれたり、地区のイベントに参加しないかと声を掛けてもらったりすることが徐々に増えてきたそうです。「何がきっかけで関係が広がっていくか分からない。大阪ではわざわざ人との関係について話すことはなかったですが、移住してきて、人の関わりが一番大事と実感しました」と敏郎さんは笑顔で話します。
米倉夫妻には2人の息子さんがいます。Uターンの綾さんには、都会で子育てをすることが想像できず、加えて近くに両親がいる地元の方が安心だと思ったそう。「いろんな人に協力してもらいながら、子育ても仕事も自分のペースで両立することができています」と話します。
お二人は移住して感じることとして「ここには人も食べ物も、ぐっとくる魅力的なものがいっぱいあります。バランスのよい“何もない感じ”がスペシャルで、何気ない日常生活に発見があって、いいなと思うことが増えていくんです」と語ってくれました。
【編集後記】
compiは居心地の良い、ずっと話していたくなる空間です。それはきっと人柄の表れで、そんなお二人が選んだ雑貨が並ぶ空間だからこそ。交流が楽しいと、人も情報も集まってきます。そしてここから、さまざまな物事が発展していくんだなと改めて思いました。
雑貨屋・洋服のcompi
・所在地:〒649-5142 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町下里556-1
・電話番号・FAX:0735-29-7555
・メール:info@compi.biz
・ホームページ:http://compi.biz