愛知県名古屋市出身。色々な地域での転職を考える中で、和歌山県を検討。県内で仕事を探す中で製炭の仕事があると知り、2017年4月に田辺市へ移住。現在は指導者から教わりながら、炭焼き職人としての道を歩んでいる。
転職を考えて移住を決断
出身地である名古屋市の港湾の作業員として勤めていた堀部さん。仕事に行き詰まりを感じて奥さまの明子さんに相談したところ「地元にこだわらず、いろんな地域から自分に合う仕事を探せば?」とアドバイスされ、転職を決断。過去に夫婦で旅行して好きになった和歌山県への移住を考えました。
「紀南地方を国道42号線に沿って観光名所を巡ったことがありました。山があって海へも近い。自然の素晴らしさに惹かれました」と話します。
具体的に移住先を探すにあたり「WAKAYAMA LIFE」などのホームページから情報を収集。「和歌山県ふるさと定住センター」を利用して現地視察をする中、木炭をつくる「製炭業」という職業があることを知りました。
「製炭について調べているうちに興味を持ちました。登山が趣味ですし、自分に合うと思いました」と堀部さん。
そこで製炭の仕事を県内で探していたところ、田辺市秋津川にある「紀州備長炭記念公園」内の炭焼き窯に空きがあることを聞き、移住を決断。2017年4月に田辺市にやって来ました。
5基ある炭焼き窯の1つを堀部さんが使用
炭焼き職人として木と向き合う
移住してすぐの頃は、製炭の工程を見学するなどして学んでいた堀部さん。半年経った頃に出会った炭焼き職人の原さんから、製炭技術を教わりながら炭づくりに取り組んでいます。
「木を切りながら森を守るという『拓伐技術』に共感して、原さんに弟子入りしました。和歌山の山は傾斜が厳しいし、窯出しは高温。仕事は大変ですが、自分の作業によって炭の出来具合が異なる面白さがある。もっと突き詰めて研究したい」と充実した表情で話す堀部さん。
製炭業を希望する人へのアドバイスは?
「製炭業は難しくて、厳しい世界。仕事が合わなくて辞める人もいます。製炭業をめざすなら、独学ではなく指導者について学ぶことをおすすめします」。
地域の人々に支えられて
炭焼き窯のある秋津川内の谷川地区で暮らしている堀部さんご家族。田舎でも田辺市街へのアクセスが良いところが気に入っています。
「谷川地区には縁もゆかりもなかったけど、近所のおばあちゃんが気にしてくれたり、移住組の炭焼き職人さんたちも『最初は大変だろうから』とサポートしてくれました。それに地域の行事にも参加させていただいて、溶け込みやすかった。ありがたかったです」と明子さんは当時を振り返ります。
3歳と0歳、2人の男の子のお母さんとして、日々育児に励む明子さん。地域での子育てについてもお話くださいました。
「地域に私と同年代の友だちが少なくて少し寂しいけど、小学生からお年寄りの方々まで、子供たちに会えば面倒を見てくれる。そういう面でも助かっています。子供たちはおおらかに育ってくれたらいいなと思っています」。
製炭業を極めて、頑張りたい
もともとピアノが趣味だった堀部さん。地域の炭琴サークルに所属し、週に一度練習に参加。仕事も趣味も充実した時間を過ごしています。
これからの目標は?
「世界に誇るブランドである紀州備長炭の世界で一番になれるよう頑張っていきたい。今は師匠について学んでいますが、自分も次世代の方々に製炭業を継承する存在になりたいです」。
炭琴で美しい音色を奏でる堀部さん。県内各地で演奏を披露