2013年から和歌山市で暮らす武田 健太(たけだ けんた)さん。2016年にローカルメディア「旅するように暮らす日常の和歌山“Wakayama Days”」を立ち上げました。メディアはやがて、人の居場所をつくりつつあります。
自然がある海の近くで暮らしたい
武田さんは大阪府茨木市出身。大学卒業後は、東京にあるマーケティングベンチャー企業、神戸にある食品商社に勤めてきました。その後「自然がある海の近くで暮らしたい」という夢を実現するため、和歌山市へ移り住みます。
「鎌倉、福岡、鹿児島、瀬戸内と色々考えたんですが、やっぱり関西がいい。サーフィンが好きで、学生時代から和歌山の海に来ていたんです。大海原に面してのサーフィン、内海ではカヤック、無人島もあります。和歌山市ならば、京阪神との縁を続けやすいのも、理由でした」
希望通り、海に臨む住まいと出会えた武田さん。2013年から和歌山市内で暮らし始めて、目に入ったことがあります。
「市内の旧中心地の衰退具合に驚きました。それまで海沿いに視点を向けていたから、気付かなかったんです。そして“豊かな自然”が、限られた人にしか活用されていない。これからは、自然や美的感覚と都市経済が共存する時代。和歌山にはそのポテンシャルがあると思ったんです」
大学時代からまちづくりに携わりたいと思っていた武田さん。行政から何か変えることが出来るなら、入るなら30歳目前の今しかチャンスはない。そう考え、和歌山市役所の職員になります。
誰もやらないなら自分で作っていく
しかし配属先では、直接的にまちづくりと携わる機会はありませんでした。そんな武田さんを動かしたのは、人との出会いでした。2014年に「リノベーションスクール@和歌山」へ参加すると、まちを盛り上げようと活動する人たちと繋がります。さらに1年後。カフェや食堂を立ち上げ、県内外を問わず、和歌山へ人を惹きつける人と出会います。
「「proyect g oficina」の源じろうさんが手がけるカフェや食堂では人々の営み、和歌山の自然、歴史、風土が見えたんです。ちょっとおしゃれして食事に来る10代のお客さん。そして、料理人・スタッフやクリエイターなど、自らおもしろく働き暮らす方たちの姿。振り返ってみると、移住直後は人のつながりがない中、観光客的な目線で見ていたのかもしれません」
市役所に入ったものの、いつまちづくりに携われるのかは分からない。それなら自分でやってしまおう。3年間住んできた中で気づいた日常の暮らしや面白いこと、もの、ひとを伝えるメディアを作ろう。2016年5月、ローカルメディア「旅するように暮らす日常の和歌山“Wakayama Days”」が始まりました。
繋ぎ目となっていく“Wakayama Days”
Wakayama Daysに紹介されるのは、穏やかなさざなみが美しい夕暮れの海、子どもたちで賑わう神社のお祭り、様々なお店の情報など。武田さんが日々目にする光景や、参加したこと、関わった人との出会いがSNSに綴られます。発信を続けることは大変。けれど、自分なりの感性でこだわりを持って、ある意味ひとつの作品を育てるように楽しんでやっている、と武田さんは話します。
「最近大きな反響があった記事の一つは、『しょうがいをもつ子どもたちとその兄弟とかお父さんお母さんがいそのうらの海で遊ぶ日』のイベントレポートです。障がいのある方がサーフィンを体験し、車イスのままビーチで遊ぶ。メディアとして、バリアフリーが整備されている磯の浦で遊ぶ様子を、かっこよく紹介したいなと思って。『和歌山がこんないいところだと思わなかった。いつも良い写真を上げてるね』。そう言ってもらうと、やっぱり嬉しいですね」
活動を続ける中で、人から頼りにされることも。
「友人知人が和歌山へ来る際は、“Wakayama Daysツアー”を企画します。『こういう人おらん?』と聞かれて、紹介をすることもあります。だんだんと“Wakayama Days”が和歌山と京阪神の『繋ぎ目』になっていけば嬉しいですね」
今後はさらに、日本各地のクリエイティブとも繋がっていきたい。そうなることで、和歌山がもっと面白くなり、やがて10代20代にも届いてほしい。武田さんは今日も、和歌山を歩きます。
・屋号:旅するように暮らす日常の和歌山Wakayama Days
・Facebook:https://www.facebook.com/WakayamaDays/
・Instagram:https://www.instagram.com/wakayama_days/