京都市出身の家具職人・西村誠さんと、洋菓子教室主宰として腕を振るっていた妻の眞喜子さん。2011年に和歌山県日高郡日高川町佐井へ。2016年にカフェ「サイテラス」をオープン。現在も京都市に住居を構える二地域住居のスタイルで、田舎暮らしを楽しんでいる。
人の縁、地域の縁が折り重なり、日高川町へ移住
若い頃から田舎で暮らしたかったという西村さん夫妻。その夢を胸に秘めて、ずっと京都市で暮らしていました。でも奥さまの眞喜子さんは50歳を過ぎてから、「人生でやり残したことがある」と思い立ち、ホームページで移住先を検索し始めました。そんな中で、大阪で開催された移住希望者向けのイベントに参加。そこで日高川町の担当者から話を聞きました。
「担当者は山下さんという方で、すごくいい人でしたが、その時はご縁がなくて移住に至りませんでした。それから2年ほどして、テレビ番組で日高川町について放送していたのを見て『やっぱり日高川町に移住したい！』と思いました。当時の担当者だった山下さんにも連絡したりして、最終的に不動産会社の紹介でこの建物に決めました」と眞喜子さん。
「便利な田舎」でちょうど良い
念願叶って、2011年2月に京都市の自宅を保有したままの二地域住居スタイルで移住。建物と裏にある畑を譲り受けました。日高川町との橋渡しをしてくれた山下さんとは今も親しい間柄。ご自身が所有するみかん畑の古木を好きに切って良いと言ってくれるそう。「縁もゆかりもないから、山下さんのような方がいて嬉しかった」とお二人は振り返ります。
「高速を降りてから町に近い、ここは『便利な田舎』。お隣の御坊市に出れば買い物も便利だし、映画も観ることができる。2人とも歳をとっていますし、移動するのに大変な場所に移住すると厳しいですから、この地域がちょうど良いです」と誠さん。
「自宅の前が雄大な山々。まずはこの景色に惚れ込みました。それとこの地域の良さは、京都に比べて気候が良いこと。それに良い意味でラテン気質（笑）。他所から来た人にも、おばあちゃんらが『おかえり』って言ってくれるし、嫌味なく踏み込んでくれている。2018年に起こった台風の時でも連絡をいただいたし、いつも助かっています」と眞喜子さん。
▲雄大な山々が自宅の目の前に！
地産地消のカフェ「サイテラス」をオープン」
2016年7月には、自宅の敷地内に『サイテラス』という地域の憩いの場をオープン。地域名の「佐井」と動物の「サイ」、ご飯を食べる所が「テラス」、くっつけて「サイテラス」。すでに独立されている西村さんのお子さんたちも日高川町を訪れてきてくれて、家族総出で建物を作り上げました。料理には自宅の畑で採れた季節の野菜を使い、できるだけ地産地消を心がけます。誠さん自家製のピザ釜で焼き上げたピザは人気メニューの1つです。
▲もっちりとした食感がたまらない！自家製ピザ
「若い頃から趣味だった釣りや農作業、薪ストーブ用の薪を集めたり、朝から晩まで次の季節の準備もしないといけないから、平日のオフはあえて作っていません。田舎は忙しいです」と話す誠さんの表情からは充実感が伺えます。
移住定住のアドバイスは？
1ヶ月の半分を日高川町で過ごす西村さんご夫妻。京都に帰れば、誠さんは家具職人としての仕事に打ち込みます。そんなお二人が考える移住定住へのアドバイスとは？
「移住定住のパターンはいろいろあると思うけど、『いままでの自分』を新しい環境やご近所さんに持ち込み過ぎるとダメだと思います」と眞喜子さんは話します。
▲誠さんが製作した木工製品は「サイテラス」でも販売
最高の二地域住居の楽しみ方
ご夫妻がこれまでに培ったキャリアは、地域の人たちにも役立っています。眞喜子さんは洋菓子教室主宰としてのキャリアを活かしたお菓子作り教室を開催。誠さんはイベントなどで過去に子ども向け木工教室を開いたこともあります。地域から受け入れられた西村さんご夫妻、自分たちが持っているものを地域に還元する、理想的な移住生活です。
最後にこれからの目標は？
「この年齢になったら、10年先とか考えていない。ここは大人が遊べるところ。この年齢になってもバタバタしていますが、日高川町にも京都にも生活があるので、身体が動ける間は二地域住居を続けて楽しみたい」と誠さんは穏やかに語ります。取材時に眞喜子さんがぽつりと話されたひと言が印象に残ります。
「旦那が家具職人だから、日高川町での生活スタイルができあがった。これまで図面のない人生を送ってきたからね、私たち。これからも2人で楽しみたいです」。
SAI terrace（サイテラス）
和歌山県日高郡日高川町佐井599-1
TEL.090-9706-1558
営業時間／11:00～17:00
不定休 ※フェイスブックページ、電話にてご確認ください