有田川町出身。2006年ごろ、山村で快適に生活できる環境を整えようとUターンしてきました。世界から注目を集めるスパイス「山椒(さんしょう)」農家として、山椒の生産から加工、販売、料理の提供まで一貫して取り組み、地域づくり活動に力を注いでいます。
山椒の歴史と農園
永岡さん夫婦は結婚後、30歳ごろに県外へ出て、さまざまな仕事を経験。有田川町へUターンする直前は和歌山市内で勤めていましたが、生まれ育った自然豊かな山村を守りたいと実家に戻り、「ぶどう山椒」の木に目を付けて、ホームページ上で売り始めました。
ホームページの名前は「かんじゃ山椒園」。「かんじゃ」は永岡家の屋号だそうです。商品数は30以上。新鮮な実山椒や臼で挽いた粉山椒のほか、佃煮や味噌、パウンドケーキやフルーツソースなどがあります。2010年ごろには、山椒とともに山の環境をまるごと味わってもらおうと「田舎cafeかんじゃ」もオープン。パスタやカレーなど山椒を活用した料理を提供しています。
山椒は古くから薬として使用されてきました。香辛料としてはウナギのかば焼きに使うくらいと思っている人が多いのではないのでしょうか。初美さんは、家庭に「塩・胡椒・山椒」の3点セットで置いておくようになってほしいと、山椒料理を広めるイベントを開いています。「山椒を嫌いという人もいますが、使い方を知らないだけ。脂身のある肉やアイスなど乳製品は辛みを穏やかにしてくれるので、何にでも使うことができます」と教えてくれました。
世界から注目されるスパイスに
かんじゃ山椒園は、実がブドウの房のようになる品種「ぶどう山椒」の発祥の地とされる有田川に沿った山間地にあります。山椒は3~4月に若葉や花をつけ、5月中頃から実の収穫ができるようになります。青い実を丸ごと食べられる初期や、種が固くなるので乾燥させたり潰したりする中期、黒くなった種を取り除く後期という風に、8月下旬まで続きます。そして9月ごろには完熟した赤山椒が収穫できます。
和歌山県は2015年度から、ぶどう山椒の海外プロモーション活動を始めました。永岡さん夫婦は2016年2月にベルギーで開催された、山椒を中心とした和歌山の食の魅力を紹介するイベントに参加。ベルギーのスパイス店、フランスの高級フランス料理店や輸入業者などとの取引が決まったほか、スイスやスペインへの輸出も徐々に始まりました。
イベント後には多くの事業者が現地視察として、かんじゃ山椒園を訪ねたそうです。初美さんは「雑誌で三ツ星シェフに評価してもらったり、山椒を宝物のように扱ってもらったりしてうれしい」と笑顔。
しかし近年は、生産者が少なくなってきていることが問題になっています。「山椒農家は70~80代ばかり。山椒は手入れをしないと1~2年でダメになってしまう。1からやると収穫するまで10年くらいかかるので、若い人に農園を引き継いでやっていってほしい」と冬樹さんは話します。
山椒を中心としたまちづくり
カフェに続く小道の側を流れる川には、水力発電機が付いています。自然を活用し、自然と一緒に生活していこうと設置しました。冬樹さんは「自然の摂理は教えられるものではなく、五感を使って体験することが大事。健康にも子供の教育にも良い、持続可能な社会の最先端が山村にある」と話します。
「地域活性化には一人ひとりが自立して、山村で生きていくということを実践することが近道だと思う。田舎に住んでいる人の中には、まちづくりを諦めている人もいる。意識の高い人を迎え入れながら、まちが持っていた“いいもの”を残して、新しい地域社会に進んでいくという思いがないと―」。
自然とともに生き、まちの特産品を守り、後世に受け継ごうと活動している永岡さん夫婦の姿に元気をもらいました。山椒の生産量日本一の和歌山県で、県民がその魅力を知らないのはもったいないこと。いろいろな料理に山椒を振り掛けてみようと思います。
・所在地 〒643-0512 和歌山県有田郡有田川町宮川129
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・Mail kanja@sansyou-en.com
・ホームページ http://www.sansyou-en.com