釜下 桃歌(かました ももか)さん

大阪府→白浜町

―釜下さんは、大阪府和泉市出身。学生の頃から地域活動や地方創生に関心があり、大学卒業後すぐ、白浜町日置川で地域おこし協力隊として活動を開始。南紀州交流公社で教育旅行や企業研修の受け入れ、現地アクティビティや民泊のコーディネートのサポートなど様々な活動を行っている釜下さんに、移住に至る経緯や将来の夢などを伺った。―

日置川の景色に魅了された

大学卒業を控え、「地方創生」に関する仕事に就きたいと考えていた釜下さんは、「地域おこし協力隊」になることを検討していた。当初は関西地方を除く地域の地域おこし協力隊員募集を探していたが、大学の恩師の縁で南紀州交流公社を紹介してもらったことがきっかけで、日置川での地域おこし協力隊募集に興味を持った。その後、白浜町役場日置川事務所の職員の方に、日置川を案内してもらったそう。
「大学を卒業する前年に日置川を訪れたところ、山が壁のように広がっている地形の中、その両脇に畑や田んぼが広がっている景色が見えた。ちょうどお米の収穫の時期で、稲穂が金の絨毯みたいになっている景色がすごく綺麗でした。その景色に魅了され、良いところだと思って、直感でここ住んでみたい!と即決で移住を決めました」と当時のことを嬉しそうに語ってくれた。
実際、住んでみた後の印象について、「海も山も川も、全部、揃っていて、毎年時期が来ると、梅酒をつけたり、秋祭りなどの行事があったりと、季節の移り変わりをしっかり感じられるところが良い。大阪にいた時は季節の移り変わりを一切感じることはなかった。また、星空もすごく綺麗で、特に冬は空気が澄んでいて、家に帰るときに夜空を見上げてしまう。満月の日は月明かりでライトがいらないくらい明るさを感じる。今までそんなことを考えたこともなかった」と日置川の魅力を話してくれた。

日置川の魅力を語る釜下さん

インタビュー場所の近くには雄大な日置川が流れる

地域おこし協力隊になったきっかけ

釜下さんは、幼い頃から自然の中で遊ぶのが好きで、アウトドアは身近だった。学生時代に、北海道の知床自然教室(キッズキャンプ)にボランティアリーダーとして参加したことが地域おこし協力隊になったきっかけの一つになったと教えてくれた。
「知床自然教室は、国立公園内の普段は入れないエリアで、水道やガス、トイレもなく、当然、お風呂もない中、指導員や大学生のリーダーも入りますが、小学生の子供たちが班別に分かれて自分たちで考え行動させるキャンプ。毎年来ている子もいる。上級生が下級生の気持ちを汲み取って上手く対応できるようになっていく様子などを見ることができ、子供達の成長にもつながっている。自分でも、そんな何かを得る体験ができるような場所を作りたいと思った」とのこと。
この時の経験から、将来「体験型農家民泊」をやりたいと思いはじめ、ノウハウや経験値を貯めたいと地域おこし協力隊になったそうだ。

地域おこし協力隊の仕事

現在所属している南紀州交流公社は教育旅行、企業研修を多く受け入れており、釜下さんは、主に体験学習へ来た学生さんのアテンド、体験準備、民泊施設の調整を行っている。「民泊やカヌー、磯釣り、田植えなどの体験学習に幅広く取り組んでいて、その運営ノウハウを学んだり、実際に民泊を受け入れている方の声を聞けたりと、経験を積みながら勉強している。同時に地域の方とのコミュニケーション、つながりを持つことができ、ありがたいです」と今の仕事について教えてくれた。
「地域おこし協力隊として移住していなかったら、何もないところから自分で地域とのつながりを作っていくことが必要になる。その点、地域での役割があった上で移住できたのはすごくありがたかった」と地域おこし協力隊のメリットについて教えてくれた。

アクティビティの一つの風鈴づくり体験

移住前に、地域おこし協力隊が地域で上手く機能しなかったニュースを見た時など、「移住後の生活が始まったら、地元の人との付き合いや意見が合わないといったこともあるだろうな」と悪い想像もしていたそう。しかし実際、移住してみると、「たくさんの人が面倒をみてくれて、私のことを気にかけてくれて、すごく温かい」と、嬉しそうに話してくれた。「大阪で生活していた時は、地域の人との付き合いを殆ど意識することがなかったが、移住後は地域の方の優しさに触れ、地域とのつながりを大事にしたいと強く考えるようになった」と釜下さんは言う。
少しでも地域の方が交流でき、集える場所、機会を提供できたらと、草木染めのワークショップを開催したり、川添茶の生産が盛んなことから、お茶揉みの同好会を作ったり、趣味で作った米粉を使ったお菓子をイベントで用意したりと釜下さんも地域とのつながりを大事にしている。

草木染めのワークショップ

草木染めのワークショップに参加した地域の人達

地域とのつながり作ってから移住するのも良いと思う

最後に、改めて将来への想いを聞いた。
「日置川で体験型農家民泊をやること。 そして、地元のお米を使った『米粉のお菓子屋』や地元で取れた野菜を使ったおかずのシフォンケーキなども作って、それらをネット販売し、地元PRもしたい」と釜下さんは話してくれた。
また、移住に関するアドバイスや地域の案内、地域の方とのコミュニケーションのお手伝いもしたいと考えており、現在、農家民泊だけでなく、交流拠点としても使える古民家を探している。
「お試し移住や地域おこし協力隊のインターンなどがあれば、事前にどんな感じの地域か知ることができる。いきなり地域に入るよりも、ワンクッションあったほうが地域に溶け込みやすいし、つながりも作りやすい。農家民泊をやりたいのも日置川にはお試し住宅がないので、そこで一時的に滞在して、地域とのつながり作ってから移住するのも良いと思う」と釜下さんは元気に答えてくれた。
―農家民泊の実現に向かって、地域とのつながりを大事にしつつ、日々地域おこし協力隊として活動する元気な笑顔が印象的だった釜下さん。新たな交流拠点づくりが実現することで地域に新しい人の流れができることを期待したい。―
取材日:2024年1月10日
<ご紹介>
一般社団法人 南紀州交流公社HP
https://www.minamikishu.com/