酒井 将守 さん

大阪府⇔日高川町

異なる環境に身を置き、自身に変化を求める

普段と異なる場所での暮らしは、自らにどのような「変化」をもたらすのか?
二地域居住をきっかけに、広がる仲間の輪と活躍の場

【職業】
店舗・テナント等の空間デザイナー

【拠点】
① 日高川町(一人暮らし)
② 大阪府茨木市(妻、こどもとの四人暮らし)

【酒井さんの二地域居住ストーリー】
異なる場所で暮らすことにより、自分自身に変化を求めた酒井さんは、大阪府茨木市と日高川町での二地域居住を開始した。コロナ禍でご近所への挨拶も難しい中、当初、孤独感に悩むも、日高川移住受入協議会の仲介で、移住者との交流の機会を得て、新たな仲間ができた。今は、空間デザイナーとしてのキャリアを活かし、仲間とともに、日高川町を盛り上げていこうとさまざまな企画を練り上げている。

 

1.二地域居住のきっかけ・目的

「自分の中でどんな化学反応が起こるのか」を知りたくて

はじめは「終の棲家」探しでした。新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している時期で、店舗デザイン等の仕事も全くなくなってしまい、時間を持て余していましたので、「南の温かい地域がいいかな」と漠然と考えながら、物件を探していました。ただ、探しているうちに、「実際に別の場所で暮らしを始めたら、自分はどんな風に変れるのだろうか、どんな化学反応が起こるのだろうか」と考えるようになりました。そして、「終の棲家」ではなく、いますぐにでも二地域居住を始めてみたくなったのです。

二地域居住のきっかけについて語る酒井さん

2.拠点選び

和歌山県の空き家バンクで物件探し

家族と住んでいる大阪府茨木市からあまり遠くなく、温かい気候の場所ということで和歌山県を候補地として、物件を探しました。和歌山には何度も家族旅行で訪れていたこともあり、親しみを感じていました。物件探しでは、県内の空き家情報が検索できる和歌山県「わかやま住まいポータルサイト」を利用しました。

インターネットをフル活用し、周辺環境を徹底リサーチ

このサイトの物件情報には、詳細な住所の記載はありませんでしたが、写真などを参考に、ある程度の場所を把握し、周りの住環境はどうか、近くに病院やスーパーはあるかなど、生活環境についても情報を集めていきました。その中で、現在の物件を偶然見つけ、日高川町役場に内見を依頼しました。この物件は、オーナーが別荘として利用されていたこともあり、かなり綺麗な状態でした。そして、私は住宅兼事務所として利用したいと考えていましたので、そのような使い方ができるかどうかを内見で確認し、この物件を借りることを決めました。

3.日高川町での暮らし・活動

キャンプさながらの単身生活

もともとキャンプが趣味だったので、こちらの暮らしには、キャンプ道具を有効活用しています。リビングにはハンモックを張ったり、日々の自炊にはアルコールバーナーも利用しています。少し冷めた料理も、すぐに温めなおすことができて便利です。ただ、大阪の家では妻がやってくれていたことも、こちらでは全て自分でしないといけないので、その点では苦労していることもあります。

日高川町の住まいの一室

新たな友人・仲間との出会い

コロナ禍中に、日高川町に来たこともあり、ご近所への挨拶は簡単なものになってしまいました。親しくなる機会が少なかったので、少し孤独を感じることもありましたが、日高川町の日高川移住受入協議会の方が、移住者同士の交流イベントに招待してくれたことで、たくさんの友人・仲間ができました。先日も18人が集まり、BBQを楽しみました。移住者の方は、人生を謳歌するために来られていることが多く、この場所で「おもしろい事」をしたいという共通認識があり、親近感を覚えます。このような人とのつながりを当地で増やしていき、何か地域を盛り上げるような取り組みを一緒にやっていきたいと思っています。

これまでの経験・スキルを活かし、日高川町でも店舗デザインの依頼を受ける

私は大阪で、店舗デザインや内装デザインを作成する仕事を続けてきました。その経験やスキルを活かして、日高川町でも、地域のお役にたてる仕事ができればと考えています。偶然のご縁が重なり、道成寺の近くにある老舗レストラン「雲水」から店舗デザインの依頼をいただきました。コロナ禍を経験した観光業界にあっては、これまでの良い所を継続しつつ、新しい要素を組み込む「伝統と革新」が重要です。このことをテーマに店舗デザインを考案すると同時に、銘菓「つりがねまんじゅう」のプレミアム版「釣鐘BLACK」を提案しました。地域の新たな名物商品になれば嬉しいです。このように、私の得意分野である「デザイン」を通じて、地域振興に貢献できればと考えています。

酒井さんによる店舗デザイン(レストラン雲水)

4.拠点間の移動

毎週末に大阪へ、金曜日の夜は家族で過ごす

大阪で暮らす娘のダンスレッスンの送り迎えがあるので、毎週金曜日の夜には、必ず大阪に帰るようにしています。大学生の息子も、大阪で一人暮らしをしているのですが、金曜日の夜には帰ってくるので、その夜は家族全員が揃います。

自家用車で移動する場合、高速道路料金とガソリン代で、往復1万円程度かかります。日高川町には、車が混雑する前に戻りたいので、土曜日の朝5時には大阪を出発します。

ただ、最近は、ガソリン価格が高止まりしているので、電車で移動することも増えています。電車で移動する場合は、デザインのラフ案作成をするなど、仕事の時間として有効活用しています。

5.家族の理解

家族との「適度な距離感」

私が二地域居住を行うことについて、家族から反対はありませんでした。娘は中学生で、とても大切な時期ということもあり、妻には茨木市に帰る頻度をどうするか相談しました。妻は、週末に家族が揃えば、そのくらいの頻度、距離感でちょうど良いと考えているようです。娘からも反対はされませんでした。むしろ、喜んでくれているのではないでしょうか。先日も、娘を和歌山に誘い、一緒に紀南エリアの観光地を巡り、ともに楽しい時間を過ごしました。

6.二地域居住のメリット

日高川町での暮らしにより、大阪での暮らしにも非日常感が生まれる

日高川町では、スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスに触れる機会が減ります。その結果、過剰な情報で脳内がパンクする状態から脱することできます。さらに、周辺を見渡せば、日高川が流れ、その周りにミカン畑が並び、とてものんびりした景色が広がっています。大阪とは全く異なる環境の中で、とてもリラックスすることができます。そして、このリラックス状態を経験すると、忙しい大阪の暮らしも、非日常感があり、とても新鮮に思えてきます。これが、二地域居住の一番のメリットです。交通費の負担感や家事に追われたりするなど、デメリットも多少ありますが、日高川町での暮らしは充実しています。今後は家庭菜園で鷹の爪などの栽培を始め、それらを使った特製カレー作りに挑戦する予定です。

酒井さんが暮らす日高川町の風景(みかん畑)