滋賀県出身。まちおこしに興味を持ち、東京都の大手IT企業を退職して、2015年1月に地域おこし協力隊として和歌山県日高川町に移住しました。協力隊卒業後は、経験を活かしてパソコンサポート業に取り組んでいます。
IT業界から「まちおこし」に
近藤さんはIT関係に興味があり、高等専門学校、大学、大学院と情報処理を専門にしてきました。IT企業「楽天」にシステムエンジニアとして就職し、開発部門で4年弱働いていましたが、テレビなどで「コミュニティデザイン」が話題になっていたことからまちおこしに興味を抱き、仕事を辞めてつながりのある仕事を探しました。地域の下見では和歌山県だけでなく他県も訪れましたが、その中で日高川町が、自分にとって一番親しみやすいと感じて、同町への移住を決めました。
日高川町寒川地域は山間にあり人口約350人。商店や診療所、役場の出張所、小学校、郵便局、JA、森林組合などが揃うコンパクトな集落です。地域を歩けばみんなと挨拶を交わすような温かいところで、近藤さんは「皆さんにはとても良くしてもらっています」とほほ笑みます。
地域の人のホタルへの思いを感じた協力隊時代
地域おこし協力隊の仕事は2017年12月までの3年間でした。さまざまな活動の中でも中心に取り組んだのは、2011年の紀伊半島大水害を機に減ってしまったホタルと、開催されなくなったホタル祭りの復活です。
着任してから近藤さんは地域の人の話を聞くことに重点を置きました。さまざまな話をする中で、地域の人みんなが盛り上がるのがホタルの話でした。「物事って好き嫌いがあって当然ですが、ホタルは誰からも愛されている存在なんですよね。それはすごいことだと思いました。ホタルの保護活動に熱心な人の話も聞いて、一緒に頑張りたいと思いました」と笑顔。
もう一人の協力隊員とともに以前はあったホタル保存会を復活させ、ホタルの幼虫とホタルの餌になるカワニナという巻貝の養殖場を整備し、地域との絆を深めました。2016年初めには、もう一度子どもに喜んでもらえる祭りをしようと、ホタル祭りの復活に向けて何度も話し合いを重ね、祭りの名称を「寒川ワンダフルナイト~ホタルと竹キャンドルの夢のコラボ」に変更して開催。美しく幻想的な竹キャンドルや、子どもから大人まで一日楽しめるイベント仕立ての新たな祭りは、回数を重ねるごとに遠方から訪れる人も増えてきているそうです。
寒川で“仕事をつくる”
協力隊として移住しましたが、定住には少し迷いがあったという近藤さん。卒隊後は他の地域で協力隊の仕事を探したりしましたが、「寒川だったらこうできる」と気付くことが多く、寒川地域で自分のスキルを活かしてできることはないかと改めて考えたそうです。「まちの人との会話の中で、寒川地域に“仕事をつくる”ことの大切さを感じていました。このコミュニティだからこそできるという価値を、これから僕がやっていく中でつかみ取って地域の人や出身の人、移住してくる人に伝えたいです」と力強く語ってくれました。
そして2019年1月、協力隊の最終年次や任期終了後1年以内に起業などをする人を対象にした補助金(国と町から合計150万円)を受けて「そうがわパソコンサポート」を開業。大手よりも安価な料金設定で、パソコンやスマートフォンなどの困りごとの相談や出張作業をするほか、ホームページ作成や写真撮影、パソコン講師などの依頼も受け付けています。今後は「起業したことで起こる変化を感じたいです」と話してくれました。
【編集後記】
移住したい人が気にすることの一つは仕事です。山間の集落は都会よりも企業が少ないので、選択肢が狭いように思われがちですが、そんな中で仕事を生み出そうとする近藤さんの姿勢が、とても格好いいなと思いました。