百合 光平(ゆり こうへい)さん

神奈川県→田辺市

和歌山県白浜町出身。高校卒業後、上京。2019年3月、神奈川県より田辺市に家族揃って移住。継業した「川湯温泉 民宿すみ家」を同年4月より開業。国内、海外からやって来る宿泊客に和歌山県の魅力を伝えている。

帰省して地元の良さを実感

大塔川の川底から熱い温泉が湧き出す全国でも珍しい温泉地・田辺市本宮町川湯。名物「仙人風呂」が楽しめることでも有名な温泉郷に、百合さんご家族が営む「川湯温泉 民宿すみ家」はあります。

高校卒業後に上京して以来、息子さんが産まれるまでは和歌山に戻ることはなかったという百合さん。息子さんが産まれてから実家に帰省したり、紀南地域に遊びに行ったことで地元の良さを実感しました。

「子供が楽しそうに遊んでいたのを見て、いつか和歌山に帰るのもいいなと思っていました。そんな中、友だちから『川湯は面白いよ』と聞いて行ってみたら、川から温泉が流れてくるのが衝撃的でした」。

日増しに和歌山に帰りたいという思いが募っていた百合さん。2017年に東京で開催された移住フェアで田辺市の担当者と出会い、連絡を取り合うように。しかし現地での仕事探しが思うように進まず、移住実行には至りませんでした。

川湯温泉で民宿を継業

それから1年が経ったある日突然、百合さんの元に担当者から「川湯温泉の民宿を継業するのはどうですか?」と連絡がありました。百合さんたちは「あの、川湯!?」と驚きましたが、「これも何かの縁!」と行動に移します。2018年7月に現地で物件を見学したのを皮切りに、移住に関する手続きや補助金の審査など、駆け足で決まっていきました。

そんな中、パートナーの紀久子さんは女将さんの仕事を教わり、百合さんは地元の友人・知人の伝手を頼りに開業に向けて活動。そして、百合さんと紀久子さん、息子さん、紀久子さんの弟さんの家族4人で移住を果たしたのは2019年3月31日、そして翌日の4月1日に「川湯温泉 民宿すみ家」として開業しました。

川湯温泉仙人風呂が目の前にある絶好のロケーションが見える

「県の担当者の方も、継業するなら『今年度中に決めなあかん!』と移住や開業に至るまでの手続き、オーナーさんとの交渉など積極的に動いてくれました。田辺市の担当の方も含めて、お二人がいなければ川湯への移住はなかったと思います」。

百合さん一家は、移住先での継業という方法で開業したケースでした。移住後にビジネスを考えている人に向けて、百合さんからのアドバイスは?

「僕たちは出会った方たちのご縁や働きかけで開業までたどり着きましたが、自分たちのカラーを出す前に商売に入りました。ですが、準備期間を確保して商売をするのも1つの方法だと思います。しっかり吟味して自分のスタイルでスタートして欲しいですね」。

実際に民宿を営んで

すみ家には国内外から宿泊客が訪れます。民宿の女将業は初めてという紀久子さんにとって、日々の仕事はさぞかし大変なのでは?と尋ねると、

「私は民宿の女将さんというより、私たち家族、ホームにお客様を迎えたいという気持ちが強いです。それに東京でも外国の方々と接する仕事に携わってきましたが、こちらの方が外国人率が高くて国際的。」と紀久子さんは話します。

また、都会で暮らしていた頃は共働きで息子さんに寂しい思いをさせることもありましたが、宿泊業を営む今は、家族揃って楽しく過ごせています。

ゆったり流れる大塔川を眺めることができる部屋もある

積極的に地域のみんなと話そう!

川湯地区に移住してカルチャーショックだったのは、コミュニケーションだったと言う紀久子さん。「都会では見ず知らずの人に突然話かけたら、不審がられることもありますが、こちらでは「まずは話すこと。そこから何かが生まれる」と実感する毎日です」。百合さんも日々の暮らしの中で同様に感じています。

「自分が知らなかった野菜の食べ方をおばちゃんから気軽に教わったこともありましたし、鮎を捕るための網の投げ方をおっちゃんに教わったことも。自分の求める情報が、挨拶をすることによって、手に入る確率が高くなります。周囲にいっぱいアドバイザーがいる。自分が勇気さえ出せば、みんなが教えてくれますよ」。

観光客をもっと楽しませたい!

百合さんのこれからの目標は、家族連れ、お年寄り、外国人など全ての観光客が、川湯でオールシーズン楽しめるような企画を考えて、実行することです。

「一般のガイドさんが案内しないような珍しい場所に連れて行ったり、地元で特別な体験ができる企画を立ち上げたり…川湯でいろんな体験をして『また明日から仕事頑張ろう!』と元気になってもらえるよう、これからも頑張っていきます」と百合さんは熱く語ってくれました。

 

川湯温泉 民宿すみ家
和歌山県田辺市本宮町川湯1429
tel.0735-42-0097
URL: kawayu-sumiya.com/