海山川に囲まれた環境で暮らしたい。子供に目が行き届く環境で、働きたい。一人の女性として、親としての願いから始まった「里山カフェ山花(さんか)」。この空間はママや子供、そして作家といった地域の人と人をつなぐ場となりつつあるようです。
物件との出会いから北山村へ
池田有里さんと北山村とのご縁は、村内にある「おくとろ温泉」で働いたことから始まりました。山川海に囲まれた土地を求め、当時は三重県熊野市に暮らしていた池田さん。毎日の通勤路に、趣ある空き家がありました。ここでカフェを始められたなら。仕事はもちろんのこと、子供ともより多くの時間を共に過ごすことができる。「もし空いてたら出会いやな。そう思っていたら、空いてたんです。これはもう越してくるしかないって」。移住してからの1年間を「準備期間」と位置づけた池田さん。引き続きおくとろ温泉へ通い、地域に馴染み信用を重ねていきました。移住への不安を和らげてくれたものは、2つありました。すでに3年間おくとろ温泉に勤めており、村内に知り合いがいたこと。その関係から紹介を受けた「移住者起業補助金」「空き家改修補助金」にも助けられたといいます。
そして2017年12月、里山カフェ山花はオープンしました。お腹いっぱいになるランチを求める勤め人から、自家製スイーツを楽しみにするママ友達まで。また夏場には、北山村観光筏下りを目的に来た観光客が山花を訪れます。
北山村の子育て環境
2児の母でもある池田さんは、子育て環境も移住の決め手の一つだったと言います。夏には近所の川にある滝つぼに浸かって遊ぶし、真冬でも外で走って遊べる。子供たちも北山村の豊かな自然を気に入っているようです。一方で、文化的な環境はどうでしょうか。「北山村は子供にものすごい手厚いんですよ。小学校通学は、家の前までバス送迎があります。中学校になったら、海外留学に行ける奨学制度もあります」。
ところが、北山村に足りなかったことが1つありました。それは子供が本に触れられる図書館です。大の絵本好きである池田さんは、自ら古本屋に通って集めた絵本を貸し出し。ミニライブラリーを立ち上げてしまいました。「子供が小さいうちは、お茶をしに出かけるのも大変ですよね。そこで2階を座敷に。子供は本を読んでもいいし、寝てもいい。お母さんたちも来やすいんじゃないかと思って」と、親目線での理由を話してくれました。
「あったらいいな」をカタチにする
池田さん自身の「あったらいいな」をカタチにすることで、地域が豊かになっていくのかもしれません。山花にあるカウンターと椅子は、村内の木工職人に製作してもらったもの。「夜は、おくとろ温泉のフロントで働いてはる方なんです。地元の人に案外知られていないのが、もったいないなと。声かけさせてもらったんです」。また店内では、近隣に住む作家の作品や農産物も展示販売しています。「すごい良いものをつくるんやけど、みんな活躍の場は、まちの方。わたしが店をやるときは絶対置きたいと思っていました」。
山花を始めて3ヶ月が経った頃、池田さんは「七色の里deピクニック」というイベントを企画しました。北山村にある七色集落のキャンプ場で、村内外から35店舗が出店。今後は、第2回目の計画を練っているところ。自身のお店をより多くの人に認知してもらいつつ、北山村で人が出会うきっかけを生む。自分が住むまちにも、里山カフェ山花のようなお店があったらいいのにな。そう思わずにはいられない北山村の魅力に出会えました。
・屋号:里山カフェ山花
・所在地:和歌山県東牟婁郡北山村七色316
・TEL:0735-30-0380