1951年大阪市生まれ。奥様の睦(むつみ)さんとは中学校の同級生。 会社を早期退職して、2008年3月1日に大阪から有田川町(旧清水町)板尾に移住。
移住を考え始めたのは?
《夫》大阪の八尾市でサラリーマンをしていましたが、※自然農に興味を持って、奈良県赤目の川口由一さん主催の「自然農塾」に一年間通って学びました。自然農に出会って移住を考え始めましたね。赤目には今も通っています。
《妻》「農業をしたい」と聞いた時はびっくりしましたね。赤目に通いだした時から何となく「何だろう?」という思いはありました。農業は、定年後の良い選択だと思っていましたが、早期退職するとは予想外でした。移住先も決まらず、そばで見ていると「どうなるのか?」の不安はありましたね。
(※川口式自然農→「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」を原則に、人間が余計なことをしないで自然の営みに任せれば、自ずから豊かになっていく、という考え方。)
有田川町(旧清水町)板尾に決めたのは?
《夫》湯浅町栖原の親類に相談したら、有田川町のほうが見つかるのでは?とアドバイスをもらいました。役場(清水行政局)に相談しに行った後に案内してもらった畑が気に入り、その後家を探しました。そのまま他の地域は見に行かずに、最初の所(旧清水町・板尾)で決めました。決め手はなんと言っても「畑」でしたね。
《妻》地元の人は、なぜこんな所が?と不思議がっていましたね。背丈ほど伸びたススキの段々畑で・・。もっと良いところがあるのに、とおっしゃっていました(笑)。
《夫》「自然農」には長年放置されている畑のほうが良いんです。10年以上放棄されていても 大丈夫です。「宝の山」なんですよ。畑との出逢い、縁があったんですね。 家は畑から車で3分程にある築130~140年の古民家です。
板尾の集落は?
《夫》私の家がある地域は「田中谷」で5軒11人、隣は「大西谷」で4軒11人です。2つの谷の最高齢者は96歳、その方は米作りはもう止めていますが、自分で食べる野菜は作っています。私の年齢でもイベントや祭りの時は若手になるので旗持ちなどの力仕事を受け持っています。
畑では?
《夫》ここ有田川町は全国的に「ぶどう山椒」の産地で有名ですが、私は一般的な野菜を作っています。個人への宅配が中心で、関東方面にもお客さんがいます。中身はお任せ「出来た時に出来たものを送る」、それでも待っていてくれるので励みになります。
困ったことは?
《夫》畑で困ったことは、獣害ですね。イノシシ・鹿用の柵を張りめぐらしているのですが、想像を遙かに超えた費用と労力がかかりました。それでも、自然の中で暮らしていける、命を育てているという喜びがあります。
《妻》よくやるねぇと感心します。一生懸命頑張って植えたものが、やっと収穫しようと畑に行ったら何もなかった!そんなことしょっちゅうですから・・よくめげないなぁと思いますね。「あ、全部やられた」の一言で済むなぁと。私なら無理です。次に作る気が起こりませんもの。育てるのが楽しいと言ってますから。羨ましいと思うのはそこですね。自分の人生で楽しめるものをよく見つけたなあと思います。
家族を繋ぐ思い
《妻》主人は住民票を板尾に移していますが、私は今まで大阪で働いていて、子供たちも大阪にいるので生活の基盤は八尾ですね。年に2~3回(正月・春秋の連休などに)来ています。心がけていることは毎日連絡を取り合うこと。スカイプで安否確認をしています。顔が見えて通信できてそれが無料!(笑)。用件は全部スカイプで済ましています。今ならではの連絡方法ですね。決めていることは、盆・正月は八尾でということ。八尾が実家ということを忘れないで(笑)。
《夫》車なら2・3時間で帰れますから。
移住してきて良かった!
《妻》主人は八尾にいると定年後に地域に溶け込む事は無かったと思います。会社員時代、地域との繋がりなんかはほとんどありませんでしたから。自分が活き活き出来るものに出会えたかどうかも。ここに来て地域にどっぷり(笑)。アテにされて、存在感がありますよ。
《夫》地域の付き合いは結構ありますが、出来るだけ参加するようにしています。
《妻》八尾にいたら「どこのどなたさん?」ここだと「あぁ、あの高嶋さん!」「よう来てくれた」「助かる」「ありがとう」、そう言ってもらえるから気分エエと思いますよ。
これから
《妻》最初に2人で来た時、雪が積もっていて墨絵のような風景でした。夢の世界のようでいいところだと思いましたね。 台所が土間だったので膝が痛い時は辛かったですが、秋にリフォームをしました。どっしりとした古民家なので、地域の人が寄り合えるような場所になれば嬉しいです。
《夫》以前は釣りなどが趣味でしたが、今は「本業と趣味が農業」です。あと「自然農」の仲間が増えれば嬉しいですね。 助け合えますから。今のままが続くのが夢です。
移住を考えている方に
《夫》まず地域との繋がり、とにかく地域に溶け込む事が大事ですね。何百年も繋がっているところにこちらが入ってくるのですから。最初はよそ者扱いがあるのかな?と思っていましたが全然無くて、「よう来てくれた」と喜んでくれました。みんないい人です。
役場の人が間に入ってくれていたので余計にスムーズにいったと思いますね。役場の歴代の担当者(ワンストップパーソン)もこの地域の出身なので頼りにしてます。あっという間の9年間でした。
『おいなぁよ Vol.2 2017.1』発行元:わかやま定住サポートセンター
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