和歌山市出身。2014年の春に東京都からUターンしてきました。日本各地に広がりつつある「ゲストハウス」という宿に惹かれ、全国のゲストハウス情報をまとめたブログを開設するだけでなく、本も出版。現在はフリーランスのライターとして活動しています。
ゲストハウスとの出会い
大学を卒業後、広告代理店に就職して、大阪府や東京都で5年間働きました。就職して2年目、忙しくて会社と一人暮らしの家との往復だけになっていた生活に危機感を抱き、別のコミュニティに居場所を作りたいと思いました。
シェアハウスをしている友人を訪ねた際、友人の同居人から将来何がしたいか問われ、改めて自身の思いを棚卸し。「カフェのように音楽や美味しい物があって、でもテーブルごとに人の関係が分かれているのではなく、空間全体がつながっていてみんなで会話できるような場所。そういう場所に身を置いていたい」と答えました。
そして数か月後の2010年12月25日。その同居人の紹介を受け、初めてゲストハウスを訪れました。「思い描いていた場所が実在することにすごく感銘を受けて。国籍も年齢もキャリアも超えてフランクにつながることができる空間に一目ぼれしました」
ゲストハウス巡りに夢中になると価値観が広がり仕事が上手くいくようになりましたが、仕事が忙しくなると今度はゲストハウス巡りが出来なくなってきました。これはいけないと思って仕事を辞め、そして一時的な帰省のつもりで和歌山へ戻ってきたのです。
和歌山やゲストハウスについて「書く」を仕事に
初めてゲストハウスを訪れた翌年の元旦にはゲストハウスについてのブログ「FootPrints(フットプリンツ)」を開設。当時ゲストハウスはあまり知られておらず、実体験をもとに何軒ものゲストハウスについて書き溜めたブログは珍しく、反響は大きかったそうです。2012年にはウェブサイト化し、16年に書籍『ゲストハウスガイド100』(ワニブックス、ISBN:978-4847094767)を出版しました。中国語と韓国語にも翻訳、出版されています。
帰省してからは、前職の経験を生かしてフリーランスのライターをしています。ちょうどゲストハウスの認知度も高くなってき始め、その分野で書くことを仕事にして、和歌山を拠点に活動できるかもしれないと思いました。執筆の他に、編集や企画も手掛けます。
フリーランスは特定の会社や組織に所属しない独立した働き方。前田さんは記事やプロジェクト単位で仕事を契約しています。これまでに、ウェブマガジンgreenz.jpで和歌山県やゲストハウスに特化した記事の執筆や、大正大学(東京都)地域構想研究所の雑誌「地域人」でゲストハウス紹介コラムを連載。他にも、ゲストハウスを利用する人を増やそうとさまざまな活動をしています。
次世代に和歌山の可能性を届けようと、30~40代の県内在住者や出身者が中心になって活動するARCADE PROJECT(アーケードプロジェクト)にも、実行委員として携わっています。“理想の仮想商店街”をつくり上げるイベント「Arcade」では、ダブロイドという紙媒体を通じて和歌山のキーマンとなる人を紹介し、和歌山の今後に向けた彼らの思いなどを伝えています。
つながりやすく、新しいことを始めやすい
前田さんは「戻ってくるまで和歌山県は何もないと思っていました。だからこそ、自分の考えていた和歌山と今の和歌山とのギャップが大きくて楽しかった。また、東京よりも若い作り手や発信者が少ないので、分野の異なる人ともすぐにつながって、一緒に新しいことを始めやすいです」と話します。
「和歌山の人たちはすてき。でももちろん、県外にもすてきな人たちはたくさんいる。そのなかで、やっぱり和歌山がいいなと思うこの気持ちはなんでなんでしょうね。そんな自分の思いを言葉に編み込みながら、より多くの人々へ和歌山の魅力を発信したいです」
豊かな自然があって、食べ物がおいしくて、地元の人が優しくて―。言葉にすると他の都道府県と同じ魅力になってしまいがちですが、和歌山県だけの魅力は確かにあります。ゲストハウス巡りを通じて全国を見てきた前田さんだからこそ、感じるものがあるのだろうなという印象を抱きました。
・HP http://footprints-note.com