堀江 みちこ さん

大阪府⇔九度山町

二地域で暮らしながらパン工房を開業

「自分のお店を持ちたい」という目標を憧れの高野山麓エリアで叶えた
元自転車競技選手の二地域暮らしとは

【職業】
パン工房経営

【拠点】
① 大阪南部(夫と二人暮らし)
② 九度山町(ひとり暮らし)

【堀江さんの二地域居住ストーリー】
九度山町で「パン工房 Vent Orange(ヴァン・オランジュ) 」を営む堀江みちこさん。堀江さんは、自転車が趣味で選手経験もあり、自転車のトレーニングで同町を訪れた際、この地域の美しい景色を気に入り、 2 0 2 3 年  1 1 月にパン工房を開業。一週間のうち九度山町5日間、大阪南部では2日間滞在し、それぞれの拠点を往来。九度山町では、地域住民、観光客、サイクリストから愛されるパンづくりに取り組んでいる。

 

1.二地域居住のきっかけ

お気に入りの場所でパン工房を開きたい

将来的に、自分で会社を興したいと考えていたのですが、自らの強みを考えた時、私はパンしかつくれないと思いました。食は人間にとって絶対に欠かせないものですし、事業性を見込めたため、パン工房の創業を考えるようになりました。パン作りの技術をさらに磨くために、2023年3月から1カ月間、フランスでパンの製法を学んできました。その後、2023年11月、自転車競技のトレーニングのために何度も訪れ、お気に入りの場所だった九度山町でパン工房を開業しました。

二地域居住のきっかけについて語る堀江さん

2.拠点探し

理想のお店を求めて「わかやま空き家バンク」で物件探し

理想とするお店をイメージしつつ、「わかやま空き家バンク」を使って、予算、立地、物件周辺の雰囲気などを踏まえながら、候補のリストアップをしました。その中でも九度山町の物件に興味をもち、役場に連絡したところ、担当の方がとても丁寧に案内してくれました。

実際に訪問して候補物件を確認したところ、大通りから離れ、入り込んだ路地の中にありました。ただ、むしろ、この方がお店としては、独立した雰囲気を出せ、お洒落な店構えにできそうだと感じ、購入することに決めました。

細い道を抜けた先の広がりがある空間にお店があります。

 

自転車用サイクルラックも完備!

3.二地域居住の実際

二拠点目での暮らしは「お店一色」、移動は自家用車

パン工房の営業日は木曜日から日曜日までの4日間です。ただ、前日に仕込みがあるので、水曜日には九度山町に来ており、日曜日までは、とにかくお店のことで頭が一杯の状態です。パンを焼くこと以外にも、帳簿管理、材料の発注、新商品開発などやることがたくさんあり、日曜日の夜、大阪に帰ると、体重が3kg落ちていることもあります。

このような九度山での多忙な暮らしについて、夫は陰ながら応援してくれているものと思っていますが、直接意見を聞いたことはありません。私にとっては、その「自由放任」が一番有難いです。

和歌山、大阪の移動には自家用車を使っています。移動にかかる費用は、高速道路は使用しないので、ガソリン代のみです。毎月11,000円~12,000円というところです。

パンが並ぶ店内

 

地域の食材を使った美味しそうなパンの数々

 

「パン」を通じたご近所づきあい

地域での暮らしの情報などは、お店に来ていただくご近所さんから教わります。「パン」を通じて、ご近所づきあいの機会が自然と増えており、私がお店の営業であまりにも忙しい様子を心配して昼食を差し入れてくださることもあります。

役場と商工会は良きアドバイザー

町特産の富有柿を生地に練り込んだ「九度山メロンパン」や、町内養鶏所の卵を使った「クリームパン」など、地元食材によるパンづくりを意識しています。新商品開発の際には、物件案内でお世話になった役場の方々や九度山町商工会の方々にご意見をうかがったり、相談に乗ってもらったりしています。商工会の方には、先ほどの「クリームパン」のレシピを作る際、町内の養鶏所をご紹介いただきました。

地元の農産物をつかった名物パン

4.二地域居住の魅力、和歌山(九度山町)で暮らすことの魅力

自分の変化に驚き

二地域居住では、完全に住居を移さない状態で、その場所の地域性とか、住んでいる人の”ひととなり”を知ることができます。いつでも元の場所に帰ることできるという意味では、「お試し移住」のようなことができるのも魅力かと思います。

九度山町で暮らし始め、私自身の気持ちがとても穏やかになったと人から言われるようになりました。和歌山の方、九度山の方がとても穏やかな人が多いということもあり、その良い影響を私が受けているからだと思いますが、こちらに来て、周りに感謝できるようになった自分に驚いています。

もちろん、歴史ある町ですので、地域で育まれてきた風習や決まり事について、理解しきれておらず、孤立してしまわないか不安もありますが、パンを通じて、ご近所の方とは良好な関係を築けています。

5.これからの暮らし方・活動の展望

もっとたくさんのお客様ゆくゆくは2号店も

私のお店のお客様がさらに増え、かつてこの商店街を通っていたというバスがまた走るようになればと考えています。さらに、カフェを併設したVent Orangeの2号店を出店したいと考えています。

また、九度山町ではパンケーキ屋さんはじめ、おしゃれなお店が増えてきており、「私も九度山町でお店をやりたい」という方が増え、もう一度、九度山の商店街が盛り上がれば、素敵なことだと思っています。