橘麻里さん

兵庫県→和歌山市

旅人にとって和歌山市の玄関口であり、地域のコミュニティを担う場でもある「Guesthouse RICO(ゲストハウス リコ)」。その顔である橘麻里さんは兵庫県育ちで、東京、大阪を経て、呼び寄せられるように和歌山へ移住しました。現在はゲストハウスを中心に、まちづくりに携わる仕事をされています。

暮らしの根を張るところ


自身の大学時代を「ほんとうに暗黒でした(笑)」と話す橘さん。「これから何をしていいか、自分がどうしていきたいのかも分からず、お先真っ暗だったんです」と振り返ります。そんな大学3回生のとき、1冊の本と出会います。『創造都市への挑戦――産業と文化の息づく街へ(佐々木雅幸著)』には、21世紀はアーティストやクリエイターを魅了するコンテンツのあるまちが栄えていくという内容がありました。「心底共感して。ああ!こういうことを仕事にしたい!と思ったんです」。

大学卒業後はまっしぐらに、まちづくりの仕事へ。神戸、大阪、東京と場を移りつつ、商業コンサルタントの企画とプランニングを11年。様々な経験を積んでいきます。その後向かった大阪で、第2の転機が訪れました。当時勤めていたのは “ロングライフデザイン”をテーマに、暮らしのプロダクトをあつかう「D&DEPARTMENT OSAKA」。土地に根差し、長く続くプロダクトに日々触れるなかで、自身の暮らしの根を張る場所を意識するように。2015年の春、ついにたどり着くのが和歌山でした。

ゲストハウスの立ち上げに参加


和歌山市には祖父母の実家があり、小さな頃から馴染みがあった橘さん。とはいえ仕事のメドはなく、知り合いもほとんどいませんでした。橘さんの移住生活は、空き家になっていた祖父母の家から始まりました。そして、人づてにGuesthouse RICOを運営する株式会社ワカヤマヤモリ舎・宮原崇さんと出会います。

築50年以上の賃貸共同住宅・ユタカビルの一角をリノベーションして、2015年12月に誕生したRICO。プロジェクトを企画したワカヤマヤモリ舎のコンセプトは “遊休不動産を活用した地域活性化”というものでした。空室率が6割となっていたユタカビルの一角が、ゲストハウスとして生まれ変わる。宿泊を機に、共同住宅へ住む人も現れるかもしれない。そうしてまちに愛着を持つ住民が増えることで、和歌山がにぎわっていく。「そのコンセプトにとても共感したんですね。長年自分がやってきた商業コンサルタントという、カタチのない仕事での経験が活かせそうなこともうれしかったです」と橘さん。立ち上げに関わり始め、今ではすっかりRICOの顔となりました。

和歌山の心地よい「近しさ」

橘さんは、和歌山と水が合うのだと話します。「人が気さく。気取らないし、友人との距離の近しさは家族のようです」。自治意識の高さも感じるのだとか。「自分たちのまちを元気にしたい気持ちが強い。自分の道を極めているゴーイングマイウェイの人が多くて、よい刺激を受けることが多いです」。まちづくりへの興味が尽きず、常にまちのことを考え、取り組んできた橘さんにとって、和歌山の人たちのあたりまえのような土着愛はとてもしっくり来たのだと思います。

やがて人の居場所をつくる

2019年4月、RICOには新たな場がオープンする予定です。その名も「Una rama de RICO(ウナ ラマ デ リコ)」。旅人にも近所の方にも開かれたバー&ダイニングです。料理を担当するのは、杉本佳奈さん。すでに和歌山市への移住を決めており、家探しのためにRICOへ宿泊。そのお手伝いをしたのが橘さんでした。訪れるゲストに合いそうな人やお店を紹介して、そっと手を差し伸べる。そこから出会いが広がり、結果として旅人が和歌山に暮らしてみるのもいい。あてもなく和歌山へ飛び込んだ橘さんは、人の居場所をつくりつつあります。

・屋号:Guesthouse RICO
・所在地:和歌山県和歌山市新通5丁目6 ユタカビル
・TEL:050-3529-6550
・HP:https://www.guesthouserico.com/
・Facebook:https://www.facebook.com/guesthouseRICO/